暴かれる福島原発 菅直人首相の人災と結論 民間事故調報告書


パニックと極度の情報錯綜 「やめた方がいいですよ」 枝野氏は菅首相にダメ出していたが…

福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)の報告書から浮かび上がるのは、「パニックと極度の情報錯綜(さくそう)」(報告書)に陥り、「テンパッた」(同)状況となった当時の菅直人首相や官邸中枢が、現場に無用な混乱を招き、事故の危険性を高めた実態だ。調査の結果、菅氏による「人災」が証明されたといえる。

「厳しい環境の中でやるべきことはやった。一定の達成感を感じている」

菅氏は昨年8月の首相退陣表明の記者会見でこう自賛した。だが、報告書が指摘するのはむしろ、やるべきでないことばかり繰り返した菅氏の姿だ。

報告書によると菅氏が東日本大震災発生翌日の3月12日早朝、東京電力福島第1原発を視察することに、当初は枝野幸男官房長官(当時)も海江田万里経済産業相(同)も福山哲郎官房副長官(同)も反対だった。

ところが、「言い出したら聞かない」(報告書)菅氏は視察を強行する。視察に同行した班目春樹原子力安全委員長は現地に向かうヘリ機中で種々の懸念を説明しようとしたが、菅氏は「俺は基本的なことは分かっている。俺の質問にだけ答えろ」と聞く耳を持とうとしなかった。


また、菅氏は第1原発に代替バッテリーが必要と判明した際には、自分の携帯電話で担当者に「大きさは」「縦横何メートル」「重さは」などと質問し、熱心にメモをとっていた。同席者は「首相がそんな細かいことまで聞くというのは、国としてどうなのかとぞっとした」と述べたという。

菅氏が官僚機構に不信を抱き、セカンドオピニオンを求めるために3月中に次々と6人もの内閣官房参与を任命したことには、当時からメディアで「船頭多くして船山にのぼる」という批判が強かった。

この点について枝野氏は事故調に「常に『やめた方がいいですよ』と止めていました」と証言した。

官邸中枢スタッフもこう述べている。「何の責任も権限もない、専門知識だって疑わしい人たちが密室の中での決定に関与するのは、個人的には問題だと思う」

菅氏が原発事故の初期段階以降も他の閣僚や事務レベルに適切な権限委譲を行わず、引き続き直接的な関与を続けたことへの批判も指摘されている。

「(政府と東電の)統合本部の士気を低下させるから、なるべく菅さんが出てこないように言ってほしいと何人かから頼まれた」

これは官邸スタッフの言葉だ。同様の証言は報告書を待つまでもなく、当時から枚挙にいとまがない。

報告書は「菅首相の個性が政府全体の危機対応の観点からは混乱や摩擦の原因ともなったとの見方もある」と指摘する。ただ、これは「前首相」に一定の配慮を示した控えめの表現だろう。

ソース:産経ニュース 2012.2.28 00:17


【福島原発事故独立検証委員会 (民間事故調)について】

福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)は昨年3月11日に起こった東京電力・福島第一原子力発電所における事故の原因や被害の状況、事故の直接的な原因だけでなくその背景や構造的な問題点を、民間の純粋に独立した立場かつ国民の一人という目線で検証してきました。政府や国会の事故調査委員会とは異なり、既存の組織や枠組みにとらわれない自由な立場を生かして、今なお避難を続ける10万人を超える被災者をはじめ、日本国民、世界の市民に向けた検証報告書を作成しました。福島原発事故の原因や被害の経緯を包括的に検証した報告書の発表は、これが世界初となります。

民間事故調の半年にわたる検証作業では、菅直人前首相や海江田万里元経産相など事故対応時に政務中枢にいた政治家や事故収拾に当たった当事者、事情を詳しく知るキーパーソンへのヒアリングを通じて、事故の原因や被害拡大の経緯について調査を行いました。

検証委員会は高い専門知識と識見があり、今回の事故に強い関心を持つ科学者、法律家、エネルギーの専門家計6人で構成されています。委員長は、東京大学名誉教授で、昨年9月まで独立行政法人・科学技術振興機構理事長を務めた科学者の北澤宏一氏です。


・福島原発事故独立検証委員会(民間事故調)
委員長 北澤 宏一 (前科学技術振興機構理事長)
委員 遠藤 哲也 (元国際原子力機関理事会議長)
委員 但木 敬一 (弁護士、森・濱田松本法律事務所、元検事総長)
委員 野中 郁次郎 (一橋大学名誉教授)
委員 藤井 眞理子 (東京大学先端科学技術研究センター教授)
委員 山地 憲治 (地球環境産業技術研究機構理事・研究所長)

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